2007年10月24日

ハーフェズ ペルシャの詩

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2日間で8本見ました。
特別招待作品ってやつは、1回こっきりの上映でしかもすぐ
公開するので、やはり有料試写会って感じでしたが、それ以
外は映画祭らしい雰囲気があっていいですね。ティーチイン
などもあって楽しめます。

今日は麻生久美子が出演したイラン映画『ハーフェズ ペル
シャの詩』です。こちらは公開が決まっていますが、かなり
限定公開となりそうな感じ。
上映は明日25日の15:50からあります。
平日の昼間ですが、ジャリリ監督と麻生久美子さんのティー
チインもあるようなので、都合の付く方はぜひどうぞ。
http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=11



-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 ハーフェズ ペルシャの詩

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − ハーフェズ ペルシャの詩


--cinema2079------------

 ハーフェズ ペルシャの詩

 Hafez
 2007年,イラン=日本,98分


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<キャスト&クルー>

監督 アボルファズル・ジャリリ
脚本 アボルファズル・ジャリリ
撮影 アボルファズル・ジャリリ
音楽 ヤンチェン・ラモ
   アボルファズル・ジャリリ

キャスト メヒディ・モラディ
     麻生久美子
     メヒディ・ネガーバン
     ハミード・ヘダヤティ
     アブドッラー・シャマシー

<評価>

☆☆☆1/2(満点=5)


<プレヴュー>

 コーランの暗誦に才能を発揮する青年シャムセディンは、詩への
傾倒や教義の解釈に疑問をさしはさまれるが、40日間の修業の後、
ハーフェズ(暗誦者)の試験を受けることを認められ、見事ハーフェ
ズとなった。そして、チベットから帰国したモフティ師の娘ナバー
トの家庭教師に任命されるが、ハーフェズはナバートに恋をしてし
まう…
 イランを代表する映画監督のひとりジャリリが麻生久美子を迎え
て撮った作品。ハーフェズは今もイランの人々に愛される実在の詩
人である。



<レビュー>

 この徹底したアンチクライマックス、何かが置きそうな気配があ
り、実際に何かが起きるのだけれど、そこにドラマティックな展開
はなく、時の部分と同じように流れていく不思議さ。たとえば、苦
労して500枚のパンを手に入れたハーフェズが、それをトラックで
運び帰る途中、同じような袋を持った一団が乗ってくる。これは何
かあるなと思うと、案の定ハーフェズが寝ている間にその男達が袋
を一緒に持ち去ってしまう。しかし、この作品はその展開をさらり
と見せ、後でハーフェズが探しに行くシーンはあるが、彼も簡単に
あきらめただ一度大声を上げるだけで、そのシーンは幕を閉じる。
 そしてそのようなアンチクライマックスの出来事の反復がこの映
画を規定する。何かは起きるが、そのどれもが物語に対して決定的
な役割は果たさず、全体を大まかに見ればただ同じようなことが繰
り返されているだけにも見えるような展開の仕方をするのである。
 このようなアンチクライマックスはこの映画特有のものではない。
他のジャリリ映画、そして他のイラン映画にもよく見られるものだ。
イラン映画の名作といわれる作品の中にはこのような反復によって
リズムを作り、それが作品の味わいを生むというものが少なくない。
たとえばキアロスタミの『友だちの家はどこ』のジグザク道、マフ
バルバフの『サイクリスト』の自転車で回る広場、それらは果てし
ない反復を文字通り表現するものだ。

 なぜそうなのか、というよりはどうしてそのような作品が次々と
生まれるのかと考えてみると、それはこの反復がどこかでコーラン
の詠唱と重なり合うのではないかと思えてくる。この作品でもたく
さんの大人や子供がひとところに集まって詠唱しているシーンが何
度か出てくるが、コーランは聖書のように読んでその意味を解釈し
たり考えたりするものではなく、繰り返し唱えるものなのだ。コー
ランは神の言葉そのものであり、それは解釈すべきものではない。
それは唱えることによってそこに何かが宿るものなのである。
 その詠唱の反復と映画における反復、これはどこかでつながって
いる。物事が反復され、そこにクライマックスがないという映画の
状態はコーランと似て、その反復に何かが宿る、あるいはそこから
何かが浮かび上がってくるものなのだ。ハーフェズの旅は鏡を拭い
てもらうこととそれに対するお礼の反復からなる。彼はその反復か
らそのたびの意味を理解していき、それを追うシャムセディンもそ
の反復から自分自身を見出していくのだ。
 その単調な反復はもちろん退屈だ。しかしその退屈の仲からひそ
やかに浮かび上がってくる“意味”は与えられたものではなく、そ
れぞれが自ら見出したという意味で貴重なものだ。だから、敢えて
その意味をここには書かないが、一言で言うならば、彼の旅はやは
り愛を求める旅であったということだ。そしてそれは愛想のものの
意味を問う旅でもあったのだ。

 さて、このイラン映画に突然入り込んだひとりの日本人、麻生久
美子についても書かなければならないだろう。そもそもはカンヌ映
画祭で『カンゾー先生』を見たジャリリ監督がほれ込み、5年越し
のオファーで出演が実現したということで、ありがちな日本でのヒッ
トを狙った作戦というわけではないようなのだが、しかしやはり日
本であるいは日本人としてみる以上、これは避けては通れない問題
だ。
 結論から言うと、違和感がある。どうしてもイラン人の中に日本
人が一人いるという印象は否めず、いくらイランが多民族国家であ
るといっても無理があると思ってしまう。特に、彼女の発する言葉
はどうしても日本語的なイントネーションで、強弱のはっきりした
イラン人の発生とは明らかに異なっている。
 ただ、だから駄目かというとそうでもないとも思う。彼女が抱え
る違和感は同時に彼女の特別さにもつながっている。彼女の存在感
と透明感はジャリリ監督がほれ込んだというだけあってこの作品世
界の中で異彩を放っている。それはハーフェズとシャムセディンに
とってのイコンであることの説得力を十分に持つものだ。
 もしかしたら、これは日本人であるから気になることなのかもし
れない。彼女のことを知らないイラン人やヨーロッパ人にはさほど
問題にならないのかも知れないとも思うのだ。
 その違和感を差し引いてもこの作品はいい作品だと思う。ジャリ
リ監督はいい作品を撮るのだが、今ひとつ代表といえるものがない
中で、この作品は代表作になるのかもしれないという予感がある。
そしてハーフェズを演じたメヒディ・モラディも国際的なスターに
なりうる可能性を感じさせた。





□ ヒビコレリンク

 ジャリリ作品からいくつか

 『かさぶた』

 『ぼくは歩いてゆく』

 『少年と砂漠のカフェ』


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:ハーフェズ ペルシャの詩>

 『ハーフェズ ペルシャの詩』のTIFFでの上映情報はこちら
  http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=11


<今日のお勧め>

 麻生久美子出演作を

価格:¥ 14,763(定価:¥ 19,950)
おすすめ度:


価格:¥ 2,990(定価:¥ 3,990)
おすすめ度:


価格:¥ 2,970(定価:¥ 3,990)
おすすめ度:


価格:¥ 4,053(定価:¥ 4,725)
おすすめ度:






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2007年10月23日

カリフォルニア・ドリーミン(endless)

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松坂は勝ちましたねぇ。
やはり大舞台に強い男なんでしょうか。ワールド・シリーズでも
当然登板がありますから、どうなるかというところですね。
メジャーは優勝したりするとすぐにグッズを作りますから、松坂
や松井カズオのグッズもすぐに入ってくるでしょうね。
日本では古田選手が引退してしまいましたが、そんな古田プレイ
ング・マネージャーの代名詞『代打、オレ』Tシャツが売れてい
るそうです。ちょっと面白いですね。


今日は『カリフォルニア・ドリーミン(endless)』という作品
です。カンヌ映画祭「ある視点」部門で作品賞を受賞したルーマ
ニア映画。これはお勧めです。
http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=153
上映はあと1回、26日の18:30からあります。
これは今回新たに設けられた“ワールド・シネマ”というジャン
ルにラインナップされています。ほかの映画祭に出品しているた
めコンペティション部門の対象外となった作品が主ということで
質の高い作品が結構集まっているようです。



-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 カリフォルニア・ドリーミン(endless)

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − カリフォルニア・ドリーミン(endless)


--cinema2078------------

 カリフォルニア・ドリーミン(endless)

 California Dreamin' <nesfarsit>
 2006年,ルーマニア,155分


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<キャスト&クルー>

監督 クリスティアン・ネメスク
脚本 トゥドル・ヴォイガン
   クリスティアン・ネメスク
撮影 リヴィウ・マルギダン
音楽 

キャスト アーマンド・アサンテ
     ラスヴァン・ヴァスィレスク
     ジェイミー・エルマン
     マリア・ディヌレス

<評価>

☆☆☆☆(満点=5)


<プレヴュー>

 ルーマニアの小さな駅の駅長ドヤルは列車の積荷の中から少しず
つ物品を掠め取ってお金をため隣の工場を買おうとしていた。そん
な駅に、ユーゴスラビアに物資を運搬するNATO軍の列車が通り
かかる。その隊を率いるアメリカ海兵隊のジョーンズはそのまま駅
を通ろうとするが、ドヤルは書類の不備を理由に駅にとどまるよう
命じる。いったいドヤルの目的は何なのか…
 編集中に事故死してしまったクリスティアン・ネメスク監督の長
編デビュー作にして遺作。不条理さと深いテーマ性を持つ秀作。


<レビュー>

 何の問題もなく通過できるはずの駅に何日も足止めされる。それ
はアメリカ軍の視点からすればカフカ的な不条理な物語になる。し
かし、この作品は視点をアメリカ側に置かず、流動的にすることで
多層的にこの出来事を見れるようにし、そこに深みを持たせている。
 アメリカ軍の視線を代表する長官のジョーンズはとにかくいらだっ
ている。職務に忠実なまじめ人間である彼は、最初は簡単に自体が
収拾できると考えるのだが、それが長引くにつれイライラを募らせ
る。部下の希望を入れるという上官としての余裕は見せるのだが、
自分自身は部下たちとは異なってその状況を楽しむことはできず、
ストレスをためていく一方である。
 駅長のドヤルは謎だ。確かに書類がそろっていないから通さない
という彼の言い分は正しい。通関が不要なら不要でそのことを証明
する書類があるはずだからだ。しかし、彼の不思議さはそこにある
のではなく、そののらりくらりとした態度にある。彼は書類がそろ
えばすぐ通るといいながら、彼らを通すために何かをするわけでは
決してなく、むしろ彼らを長くとどまらせようとしているかに見え
る。町の祭りにも参加しない彼にはアメリカ人たちを引き止めてお
く理由などないように見えるのにである。
 その理由は、何度か挿入される過去(第2次大戦終結時)のエピ
ソードによって徐々に明らかにされてくる。ドヤルとその家族はナ
チスを追い払ってくれるアメリカ軍がやってくるのを待っていたの
だ。しかしそこに現れたのはソヴィエト軍で、ナチスからは解放さ
れたがまた別の圧制がそこには待っていたわけだ。子供だったドヤ
ルは「アメリカ人が来る」という両親の言葉を信じて、アメリカ人
を待ち続け、そのアメリカ人がついにやってきた。彼はアメリカ人
を待っていたのだ。
 しかし、彼はアメリカ人を歓待するわけでもなく、彼らに救いを
求めるわけでもない。「待っていて、来た」という事実をただ受け
入れるだけなのだ。そこにはやはり不条理さがあるが、歴史の重み
というものも見える。時間は跳ぶように流れていくけれど、一人一
人の人間の中では歴史は積み重ねられ、数十年前の出来事と現在の
出来事は密接に結びついているのだ。その感覚の違いが不条理さを
生み、この物語の不思議さを生んでいる。

 しかし、この物語はただそれだけでは終わらない。ネタばれには
なってしまうが、この作品にとって重要な部分なので、書いておき
たいと思う。
 駅に足止めされて4日がたったころ、長官もついにドヤルと打ち
解けて彼とワインを酌み交わし食事を共にする。しかしドヤルはそ
こで「同胞がアメリカ軍の爆撃で死んだ」ことをジョーンズに言う。
それは途中のニュース番組の映像の中でも指摘されたアメリカ軍に
よるソフィアへの誤爆のことだろう。このセリフでこのシーンはぷ
つりと切れ、ドヤルとジョーンズの関係は再び断絶する。
 そして、ジョーンズはドヤルをやっつけようという村の住民たち
と協力し、彼らを後方から援護しようと提案する。警察とつるんで
いるドヤルの側が発砲したら打ち返すというのだ。
 しかし、その行動のそのとき、ついに列車は出発が決まり、ジョー
ンズは住民たちに何の説明もすることなく、そして自分の部下たち
にその計画を話すことすらせず、その地をあとにする。アメリカ軍
はまたしてもやってこないのだ。
 この作品には、不条理さと恐ろしさとアメリカへの痛烈な皮肉と
人々の生活がある。語られない余白にあるさまざまな思いがあふれ
出し、作品を見終わったあとにも思考の流れは続く。こういう作品
はいい。決して何かを難しく考えさせるわけではないけれど、世界
のどこかでおきている私たちとはあまり関係なさそうなことを、個
人のレベルに引き戻すことで、私たちにも捉えることができるよう
にする。そんな作品を作れる若き才能が事故で亡くなってしまった
のは、どうにも惜しまれてならない。






□ ヒビコレリンク

 とくにありません


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:カリフォルニア・ドリーミン>

 『カリフォルニア・ドリーミン』のTIFFでの上映情報はこちら
  http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=153


<今日のお勧め>

 ルーマニア映画といえそうな映画

価格:¥ 4,200(定価:¥ 4,935)
おすすめ度:


価格:¥ 4,935(定価:¥ 4,935)
おすすめ度:







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2007年10月22日

リーロイ!

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どうも、今日も眠く、忙しいです。
映画祭以外の情報や作品もお届けしたいと思っているのですが、
なかなか手が回りませんで。ここはあきらめて今週1週間お付き
合い下さい。
今日は夜に、フランソワ・オゾンの新作『エンジェル』の上映が
あります。『続・三丁目の夕日』もあります。
当日券もまだあると思うので、興味のある方は是非チェックして
みてください。
ちなみに明日は『マイティ・ハート』というアンジェリーナ・
ジョリー主演のウィンターボトムの新作があります。当日券は
0時から発売だそうなので、是非見たいという方はTOHOシ
ネマズ六本木ヒルズのサイトをチェックしてください。
http://www.tohotheater.jp/theater/roppongi/index.html

今日は『リーロイ!』という作品です。
昨日に続いて日本での配給は未定です。この機会にどうぞ。
http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=13




-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 リーロイ!

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − リーロイ!


--cinema2077------------

 リーロイ!

 Leroy
 2007年,ドイツ,89分


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<キャスト&クルー>

監督 アルミン・フォルカース
脚本 アルミン・フォルカース
撮影 トニー・ミッチェル
音楽 アリ・N・アスキン

キャスト アライン・モレル
     アンナ・ハウズブルグ
     コンスタンティン・フォン・ヤシェロフ
     ギュンター・カウフマン

<評価>

☆☆1/2(満点=5)


<プレヴュー>

 アフロヘアのアフリカ系の少年リーロイはドイツに黒人で発明家
の父と白人の母と暮らすれっきとしたドイツ人。そのリーロイが1
学年下のエーファに恋をする、エーファもリーロイのことが気に入っ
て二人は付き合い始めるが、エーファの両親はネオナチらしい…
 ドイツの新人監督アルミン・フォルカースが撮ったキュートなコ
メディ・ドラマ。人種差別をネタにしながら、少年たちを描くこと
でかわいく、ほほえましいコメディになっている。



<レビュー>

 アフロヘアのリーロイも、その恋人になるエーファも、リーロイ
の親友のディミもなんだかかわいくて、それだけで作品としては成
り立っている気もするし、子供向けの作品としてはなかなか面白い
のかもしれない。しかし、大人向けの作品としてみると何かが足り
ないという気になってくる。
 この作品で一番面白いのは、リーロイを差別するネオナチ兄弟の
行動である。とにかく相手をひっぱたき、とにかくつるんで暴力を
振るり、犬に“ハイル”という芸を仕込ませようとする。もちろん、
この作品はそんなネオナチに対する皮肉を込めた作品で、それが最
もよく表れたのは、医者が「スキンヘッドの家族には骨折が多い。
受動喫煙みたいなものか」というところで、このセリフは皮肉が効
いていて面白かった。
 しかし、このようにネオナチとアフリカ系というわかりやすい構
図であるにもかかわらず、ネオナチ兄弟とリーロイたちの関係は今
ひとつすっきりしない。ネオナチ兄弟もリーロイも結局相手にどの
ような感情を抱いているのかがはっきりと観てこないのだ。もちろ
ん両方とも、恋人の兄弟⇔兄弟の恋人という関係もあってただ敵対
することはできないのかもしれないが、その感情の機微が描かれて
いるわけでもなく、なんとなくただぎこちない関係が続いているよ
うに見えてしまう。
 リーロイが“ブラック・パワー”に感化されてマルコムXやなん
かに入れ込んでいくエピソードもそれによってリーロイがどう変わっ
たのかがわかりにくく、今ひとつ効果的とはいえない。
 さらには、物語が展開していく中で、それぞれの登場人物が知っ
ていることと観客だけが知っていることの区別が今ひとつついてい
ない。このことはネオナチ兄弟は知っていて、リーロイは知らない
ということが明確にされないために、物語の展開にも、関係の変化
にもメリハリがなくなってしまうのだ。
 そして、リーロイと両親の関係もいまいちはっきりしない。両親
は基本的にはリーロイを尊重し、リーロイの自由にしているわけだ
が、結局リーロイに反発されてしまうし、その関係もあまりうまく
描かれているとは思えない。

 一つ一つのギャグには結構面白いものもあり、リーロイという主
人公の視点に絞ってみれば、わかりやすく感情も理解しやすく見る
ことができる作品ではある。もう少し映画としての組み立てをうま
くすればかなり面白い作品になったと思うだけに、少し残念だ。オ
チにもメッセージがこめられていてそれはそれでいいのだが、その
割にはどうも中途半端な印象が付きまとい、最後まですっきりしな
い。
 でも、人種差別が題材になった子供が主人公のコメディなんてい
うドイツ映画は今まで見たことがなかったから、新鮮さはあった。
映画祭というのはやはり新しいものを発掘する場でもあるから、こ
のような作品を取り上げるのには意味があるだろうし、ここから広
がっていくものもあるのではないかと思う。





□ ヒビコレリンク

 とくにありません


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:リーロイ!>

 『リーロイ!』のTIFFでの上映情報はこちら
  http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=13


<今日のお勧め>

 リーロイが見ていた作品や黒人関係。

価格:¥ 600(定価:¥ 690)
おすすめ度:


価格:¥ 1,349(定価:¥ 1,500)
おすすめ度:






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2007年10月21日

青い瞼

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昨日は映画祭にはいけなかったのですが、レッドカーペットとか
オープニングセレモニーとかいろいろあったようです。
その様子はホームページから見ることができます。
イベント情報なども載っているので、ご覧ください。

今日もその作品で『青い瞼』です。
上映は今日21日の夕方と23日です。
http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=5
まだ日本での配給が決まっていないそうなので、もう見る機会は
ないかもしれません。興味のある方はこの機会にどうぞ。




-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 青い瞼

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − 青い瞼


--cinema2076------------

 青い瞼

 Parapados Azules
 2007年,メキシコ,98分


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<キャスト&クルー>

監督 エルネスト・コントレラス
脚本 カルロス・コントレラス
撮影 トナティウ・マルティネス
音楽 イナキ

キャスト セシリア・スアレス
     エンリケ・アレオラ
     アナ・オフェリア・ムルギア
     ティアレ・スカンダ
     ルイサ・ウェルタ

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレヴュー>

 制服会社に勤めるマリナは年に一度の抽選会でリゾートへの豪華
ペア旅行があたる。しかし、友達もいないマリナは一緒に行く相手
も見つからずに困ってしまい、しばらくあっていない姉を誘うこと
にする。そんな時、元同級生だというビクトルに話しかけられるが、
マリナは彼のことをまったく覚えていなかった…
 孤独な男女の出会いを描いたドラマ。監督はこれが長編デビュー
作となるメキシコ期待の若手監督エルネスト・コントレラス。



<レビュー>

 マリナがビクトルと旅行に行くことを決めるまでに結構な時間を
割かれているが、実際この物語が展開されるのはこの決定以降のこ
とで、それ以前は背景説明に過ぎない。マリナは姉と行くことに決
めるが、夫とうまくいっていない姉は夫とふたりで旅行に行けるよ
うマリナに旅行をあきらめさせようとする。マリナが首を縦に振ら
ないために、姉はマリナを負け犬と呼んでふたりは喧嘩別れする。
マリナがビクトルを誘ったのは、その姉とのやり取りが原因だろう。
旅行の相手を探すのもそうだが、自分だって男と付き合うことぐら
いできるということを姉に見せてやろうという意図があったのだ。
前半部分はこのようなマリナの心情と彼女の孤独の説明であり、同
時にビクトルの孤独の説明でもある。
 このふたりがであったとき何が起きるか、これがこの映画のテー
マである。ふたりとも一人でいることになれすぎて、人とどう接し
ていいのかがわからない。そういう人が人と触れ合うとき、思うが
侭にならないストレスにさいなまれてしまう。一人でいれば何でも
自分の好きなようにできるが、誰かと一緒にいると何かを妥協しな
ければいられない。まだ打ち解けていないふたりならなおさらそう
だ。
 ふたりの初めてのデートであるピクニックのシーン、敷物を敷い
て座ったふたりの間には並木で作られたトンネルがずっと奥まで続
いている。これはもちろんふたりの間にある溝の深さを表している
のだろう。そしてマリナはあまり会話もせず敷物の繊維をむしる。
もちろん、それはストレスを感じたときに人が気を紛らわせるため
にとる行動だ。
 物語としては、その距離が徐々に縮まっていくとなりそうだが、
マリナにはその距離を縮めようという気があるようにすら見えず、
心理的な距離は縮まらないままふたりはデートを重ね義務のように
段階を踏んでいく。そしてふたりの関係が最後まで行くかという夜
のダンスホールでもふたりの距離は縮まっていない(これも視覚的
に表現される)。
 結局ふたりは打ち解けないのだが、隣にいるということにはまっ
たく意味がないわけではない。マリナは凍りついた固い殻をまとっ
てビクトルのといるけれど、ビクトルの体温はわずかずつでもその
固い殻を溶かしていく。殻の内側にたどり着くことはなくともその
殻には凹みができ、その相手がいなくなると、その凹みは空洞とな
る。マリナは最終的にこれ以上近づくことの危険を察して相手を遠
ざけるが、そこで始めてその空洞に気が付く。孤独な人同士がであっ
たとき、すぐにはドラマは生まれないが、そのような過程を経て何
かがわかる。

 この作品を見て思い出すのはアキ・カウリスマキの作品だ。無口
で不幸な二人の物語、そして孤独なもの同士が出会う物語、このふ
たりの主人公をマッティ・ペロンパーとカティ・オウティネンが演
じていれば、完全にカウリスマキの世界となるような気がする。
 場所がメキシコになっても孤独で無口で不幸な二人が出会う物語
がもつムードは変わらない。果たしてこのエルネスト・コントレラ
スがカウリスマキのようにこんな作品ばかりを撮っていくのかはわ
からないが、少なくともこのような作品はフィンランドでもメキシ
コでも作られ、日本でも受け入れられるいわば世界に普遍的な物語
であるということだ。
 だからこの作品もしっくり来る人には結構しっくりと来る作品だ
と思う。映像の使い方も上手だし、配役も絶妙、結末も微妙だが考
えさせられる。映画祭という華やかな舞台にこれだけ地味で暗い作
品を持ってくるというのはなかなか面白い。




□ ヒビコレリンク

 マッティ・ペロンパーとカティ・オウティネン

 『パラダイスの夕暮れ』

 『愛しのタチアナ』
  


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:青い瞼>

 『青い瞼』のTIFFでの上映情報はこちら
  http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=5


<今日のお勧め>

 アキ・カウリスマキです。

価格:¥ 3,400(定価:¥ 3,990)
おすすめ度:


価格:¥ 4,489(定価:¥ 5,985)
おすすめ度:


価格:¥ 1,760(定価:¥ 2,500)
おすすめ度:






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2007年10月20日

デンジャラス・パーキング

ホームページ「日々是映画」はこちら
http://www.cinema-today.net/



東京国際映画祭が開幕しました。
今年は結構いい作品があると思うので、皆様もぜひどうぞ。
http://cinema-today.net/feature/tiff2007.html
今日はその中から『デンジャラス・パーキング』です。
上映は23日と26日です。
今日も眠いです。




-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 デンジャラス・パーキング

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − デンジャラス・パーキング


--cinema2075------------

 デンジャラス・パーキング

 Dangerous Parking
 2007年,イギリス,109分


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<キャスト&クルー>

監督 ピーター・ハウイット
原作 スチュアート・ブラウン
脚本 ピーター・ハウイット
撮影 ゾラン・ヴェルジェコヴィッグ
音楽 アンドレ・バロー

キャスト ピーター・ハウイット
     サフロン・バロウズ
     ショーン・パートウィー
     アリス・エヴァンス
     トム・コンティ

<評価>

☆☆☆1/2(満点=5)


<プレヴュー>

 酒にドラッグにタバコに女、カルトな映画監督として有名なノア・
アークライト、今日も酔っ払った状態で講演にかかろうとするとこ
ろでグラマラスな美女キルスティンを見かける。一方、しらふのノ
アが親友のレイに薦められて美人チェリストをお茶に誘うという時
間の流れも平行して展開する。
 『スライディング・ドア』の監督ピーター・ハウイットがスチュ
アート・ブラウンの“Dangerous Parking”に感銘を受けて、自ら主
演して撮ったコメディドラマ。はちゃめちゃな中にしっかりとした
ドラマをこめた作品。



<レビュー>

 最初は変な金髪に染めた主人公が男女に終われるシーンから始ま
る。このシーンの意味は少し後で明らかになるのだが、このシーン
を含んだ金髪のノアともとのダークブラウンの髪のノアの2つの時
間が平行して展開される。金髪のノアのほうはドラッグと酒に溺れ、
女アサリをする男、自然の髪のノアのほうは親友のレイの薦めでク
レアと出会い、それを進めていく男である。
 前半は金髪のほうが中心で、この金髪男のハチャメチャな行動で
笑わせる。常に酒とドラッグでらりった状態のノアの行動はぶっ飛
んでいて、映像のほうも無駄に(といっては失礼だが)CGなんか
を駆使しておかしさを生み出している。イギリスのコメディという
のは日本人の笑いのつぼとはずれているものが多いのだが、この作
品はアメリカのインディペンデント作品のようでなかなか笑える。
 中盤からは金髪の男は去り、自然の髪のノア(こちらのほうが時
間的に後の出来事であるとわかる)のほうが中心になる。ここに至
るとコメディというよりシリアス・ドラマの要素が強くなり、最終
的には感動物語になる。しかもそれは決して安っぽいものではなく、
しっかりと作りこまれたものだ。

 前半のハチャメチャなコメディと後半のシリアスなドラマ、その
両立を可能としているのは主演のピーター・ハウイットの存在感に
よるところが大きいと思う。このピーター・ハウイットは80年代か
らTVで役者として活躍、98年に『スライディング・ドア』で監督
としてデビューして注目を集めた。役者としては泣かず飛ばずで、
監督として才能を開花させたわけだが、この作品を見るとなんのな
んの役者としても十分な力量を持っているように見える。確かに演
技派というわけではないが、コミカルで味わいのある演技をしてい
るように見える。
 もちろん全編がこのピーター・ハウイット演じるノア自身のモノ
ローグによって展開されるというのも、観客がノアに感情移入しや
すくしているわけだが、そのやり方もうまく利用して観客を「ノア
の世界」に見事に引き込んでいると思う。
 実は最初は自らが主演する予定ではなかったらしいのだが、キャ
スティングの問題でそう決めざるを得なくなり、しかし原作にほれ
込んでいたピーター・ハウイットにしてみれば、そのほうが結果的
にはよかったということになったらしい。主役であり、全編にモノ
ローグを入れるという役回りはこの物語に相当入れ込んでいなけれ
ば効果的にやることは難しく、すべてを一人でやったというのは確
かに結果的によかったように思える。

 この作品はインディペンデント色の濃い作品だが、決して一般受
けしない作品というわけでもないと思う。前半はカルト作品っぽい
雰囲気もあるが、決してマニアックにならないように展開に工夫が
なされており、後半のシリアスな部分にうまくつながるようになっ
ている。見た目はとっつきにくいが実際に話してみるとやさしい人
のような感じでなかなか好感が持てた。
 言うなれば、つっぱって走り続けてきた若者が中年に差し掛かっ
て足を止めざるを得なくなってしまったが、立ち止まってみると、
その静止した世界にもすばらしいものはたくさんあったと気づくと
いうような… というのとは少し違うが、まあ簡単に言ってしまえ
ば人生つらいこともいろいろあるが、そう悪いもんじゃないってこ
とかな。






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posted by ヒビコレエイガ at 15:03 | TrackBack(0) | バックナンバー(移行中) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする