2007年10月19日

再会の街で

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http://www.cinema-today.net/




今週、来週とやたらと忙しいのです。まあ、映画祭もあって自分で
忙しくしているというのもあるんですが、そういうときに限って脇
からもいろいろと持ち上がってきて、さらに忙しさに拍車がかかっ
たりします。
そんなときはやはりうまいもんでも食って英気を養いたいところで
すが、のんびりとネットをチェックしたりする暇もなく、楽天をみ
て、“グルメNEWショップ”というのをぼんやりと眺めてしまった
りしました。
ハンバーグがうまそうだなぁ…

さて、
いよいよ東京国際映画祭は明日から。特集ページもオープンしたの
で、見てくださいね。
ここまで事前に6本見ましたが、その中では一押しの『再会の街で』
を今日はお届けします。


-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 再会の街で

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − 再会の街で


--cinema2074------------

 再会の街で

 Reign Over Me
 2007年,アメリカ,124分


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<キャスト&クルー>

監督 マイク・バインダー
脚本 マイク・バインダー
撮影 ラス・アルソブルック
音楽 ロルフ・ケント

キャスト アダム・サンドラー
     ドン・チードル
     ジェイダ・ピンケット=スミス
     リヴ・タイラー
     ドナルド・サザーランド
     マイク・バインダー

<評価>

☆☆☆☆1/2(満点=5)


<プレヴュー>

 ニューヨークで歯科医を開業しているアラン・ジョンソンは街で
しばらく音信普通だった大学時代のルーム・メイトのチャールズを
見かけるが、気づいてもらえなかった。実は彼は9.11で家族をいっ
ぺんに亡くしていたのだ。またすぐにチャールズを見かけたアラン
は彼に声をかけるが、彼はアランのことを覚えていなかった…
 9.11事件が人々に残した衝撃をPTSDを題材として描いたヒューマ
ン・ドラマ。アダム・サンドラーがシリアスな役を熱演し、見ごた
えのある作品に仕上がっている。



<レビュー>

 アダム・サンドラーとドン・チードル、このふたりの存在感が何
よりすごい。特にアダム・サンドラーは演技派にもなりうるところ
を見せ、また同時にいわゆる“プッツン”してしまった男の一面を
エキセントリックな行動によって表現するときにはコメディアンと
しての才能を発揮している。エキセントリックな彼の行動はその真
意を考えれば笑えるようなものではないはずなのだけれど、アダム・
サンドラーという役者が演じることによってそれは心から笑える行
動になるのだ。
 アダム・サンドラーはこのところ喜劇役者から性格俳優へと脱皮
しようとしているように見える。その萌芽は『パンチドランク・ラ
ブ』のあたりからあったが、このところの『スパングリッシュ 太
陽の国から来たママのこと』や『もしも昨日が選べたら』という作
品でその傾向は顕著になってきている。そして、この『再会の街で』
では作品自体がもはやコメディではないという点でさらに一歩進ん
だという気がする。しかもこの作品は本当にすばらしい作品であり、
「9.11」や「PTSD」というホットなトピックもあってオスカーを取っ
てもおかしくないような作品にもなっている。この作品でアダム・
サンドラーがアカデミー主演男優賞でも取るようなことになったら。
彼は一気に演技派としての地位を確立するだろう。そうなれば、最
近人気も翳りがちなトム・ハンクスに変わってアカデミー賞の常連
となることも… などということすら考えさせるほどにこの作品の
アダム・サンドラーは存在感がある。
 もちろん、9.11の被害者の家族という設定はわかりやすいもので
あり、その人物像というのも作りやすかったという面もあるかもし
れない。しかし、その人物は家族を失ったショックでPTSDにかかり、
記憶を下意識の淵へと沈めた人物なのだ。そのような人物をリアリ
ティをもって演じることが難しいことであることは間違いない。こ
の役を演じたアダム・サンドラーにはどこか『レインマン』のダス
ティン・ホフマンや『カッコーの巣の上で』のジャック・ニコルソ
ンを髣髴とさせるものすらあったように私には思えた。

 物語のほうもなかなかうまい出来だ。展開としてはドン・チード
ル演じるアランがアダム・サンドラー演じるチャールズに救いの手
を差し伸べるというところから始まるわけだが、その実、助けを求
めているのはアランのほうなのだ。妻との関係、仕事、彼自身も周
囲もそこに問題があるとは思っていないのだが、彼は行き詰まって
おり、それが彼にチャールズを求めさせたのだ。
 アランが悩める男であるということはリヴ・タイラー演じる精神
科医アンジェラの存在によってあらかじめ明らかになっている。ア
ラン自身は精神科医にかかるほどではないからアンジェラとの世間
話で解を見つけようとするのだが、それこそが彼がセラピーを必要
としている何よりの証拠だ。彼はチャールズに出会い、彼を救いた
いために彼と一緒にいるのだと妻に言うが、彼は妻からも仕事から
も逃げられる出口をチャールズに見出したのだ。
 この見た目とは逆の関係というのがこの作品を非常に面白くして
いる。そしてアンジェラとアランの妻ジャニーンがそれを支え、行
き詰まったふたりの内面に変化をもたらしていくのだ。だから、そ
れほど意外な展開というものはないにもかかわらず、目が話せない。
そこにはそれぞれの登場人物の内面、それぞれの関係、という小さ
な物語がたくさん盛り込まれているからだ。人は人との関係によっ
て絶望に沈むこともあれば救われることもある。そんなことをこの
物語は語っているのではないか。
 そして同時に人間が苦しめあうのは相手の気持ちを想像できない
(あるいはしようとしない)からだということもこの作品は言って
いる。そのことを言うためにドナという物語とは一見無関係な人物
を登場させた。このドナの存在もこの映画のひとつの肝であると私
は思う。

 9.11という題材によって注目されることは仕方のないことだが、
ここで語られている物語は9.11という特別な事件のみに当てはまる
ことではない。絶望的な経験をした男と日常に行き詰まった男が出
会い、経験を分かち合う。絶望的な経験というのはなかなかするこ
とはないしできればしたくないことだけれど、想像するのは難しい
ことではない。そして日常に行き詰まるというのは誰しもが経験し
うることである。スクーターにまたがって夜の街を失踪するふたり
の男の姿に挟まれたこの作品は私達の誰もが経験するかもしれない
精神的な危機を描いた物語なのだと思う。
 この物語によって主人公のふたりが本当に救われ、あるいは解放
されたかどうかはわからない。しかし、どん底まで行けば物事は必
ずよい方向に進む、そんな希望を私達に見せてくるのだ。




□ ヒビコレリンク

 『パンチドランク・ラブ』

 『スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと』

 『もしも昨日が選べたら』


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:再会の街で>

 『再会の街で』のTIFFでの上映情報はこちら
  http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=15
 公式サイトもオープンしています。


<今日のお勧め>

 アダム・サンドラーです。

価格:¥ 1,332(定価:¥ 1,481)
おすすめ度:


価格:¥ 1,480(定価:¥ 1,481)
おすすめ度:




価格:¥ 4,980(定価:¥ 4,980)
おすすめ度:




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2007年10月17日

誰かを待ちながら

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なんだか10月に入ったあたりからずっと眠いです…
何なんだこれは。
季節の変わり目で安眠できていないのでしょうか
眠気の覚めるアロマでもかいで頑張りますかね…

あるいは安眠枕でも…


今日も東京国際映画祭から。
『誰かを待ちながら』という作品です。
上映は21日と26日にあります。
http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=21



-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 誰かを待ちながら

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − 誰かを待ちながら


--cinema2073------------

 誰かを待ちながら

 J'Attends Quelqu'un
 2007年,フランス,96分


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<キャスト&クルー>

監督 ジェローム・ボネル
脚本 ジェローム・ボネル
撮影 パスカル・ラグリフール
音楽 

キャスト ジャン=ピエール・ダルッサン
     エマニュエル・ドゥヴォス
     シルバン・ディユエド
     フロランス・ロワレ=カイユ
     エリック・カラヴァカ

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレヴュー>

 フランスの田舎町でカフェを営むルイは馴染みの売春婦と逢瀬を
重ね、その妹アニエスは最近夫との関係がうまくいっていない。そ
の町に2年間の旅を終えて帰ってきた青年ステファンはかつての恋
人らしき女の家に無言電話をかけ、その家を除き見る。
 小さな田舎町を舞台に、そこで暮らす人々が抱える孤独を描いた
佳作。『明るい瞳』のフランス若手監督ジェローム・ボネルのいか
にもフランス映画らしい映画。




<レビュー>

 私は時々、映画を見ながら「哲学を忘れているのではないか」と
思うことがある。その哲学とは「人生哲学」というように言う場合
の哲学ではなく、純粋に何かを突き詰めて考えるという哲学だ。そ
のように思うことはフランス映画に特に多いが、この作品もそんな
作品のひとつだった。
 かといってこの作品が哲学的な作品かというとそうでもない。こ
の作品は簡単に言えば“孤独”の物語である。人は孤独にどうしよ
うもなく惹かれるけれど、同時に孤独から逃れて大切な人と触れ合
いたいと思う。そのような人間と孤独の関係をただただ繰り返し描
くのだ。

 主人公のルイは、段々わかってくるのだが、妻と別れまだ小さな
子供は母親と暮らしたまに彼の住居兼仕事場(カフェ)にやってく
る。そしてまた彼には馴染みの売春婦のサビーヌがいる。そのルイ
の妹アニエスは小学校の先生で新聞記者の夫と幸せな生活を送って
いるが、その夫との関係がこのところ今ひとつうまく言っていない。
2年間の旅を終えて故郷に帰ってきた青年ステファンは昔の恋人ら
しい女性に声をかけられず、彼女の夫らしい男と何とか友達になろ
うとする。
 彼らに共通するのは心に空白を抱えているということだ。その空
白を埋めてくれる「誰か」を彼らは待っている。だからこの作品は
『誰かを待ちながら』というタイトルなのだ。
 しかし、この作品はただそれだけだ。3人の誰かを待っている人
の数日間をただただ映し出しただけだ。それぞれの人生のときは進
み、小さな事件はいくつかおきるが彼らの空白は埋まらないまま淡々
と物語は進んでいく。そうなると、どうしても考えてしまうのは、
彼らが抱える空白に巣食っているものは何かということだ。そして、
それが“孤独”である。彼らはその空白を埋めようとするのだが、
そこに巣食っている“孤独”もどこかで失いたくないと思っている。
だからこの物語は進まず、彼らは孤独なままなのだ。
 これはいったい何なのか。単なる停滞なのか、それとも小さな一
歩なのか、あるいは人生とはそもそもこういうものなのか。この物
語はそのようなことを観客に考えさせる第一歩なのだ。だから、こ
の作品自体に哲学がないとしても、観客はここから哲学の深みに入
り込んでしまう。

 この作品の持つ意味を解くにはおそらくルイの愛読書として何度
も言及される「感情教育」を読む必要があるのではないかと思う。
私も概略しか知らないのでそこから解き明かすことはできないのだ
が、この映画の物語と「感情教育」とは少なからず重なり合う部分
があったと思う。
 「感情教育」は小説だが、フランス映画は哲学や小説に言及する
のが好きだ。それはフランス映画が映画だけに終わるのではなく、
常にその外側へとつながっていっていることを意味している。映画
の中で描かれているのは見ている自分とは関係ない別世界の出来事
ではなく、実生活の写像なのである。人はそれを哲学を通じて理解
することができる。
 この作品の物語は「だからなんだ」と言いたくなるようなもので
あり、はっきり言って退屈といいたくなる部分もある。しかし、そ
の退屈にこそ哲学があるのかもしれない。退屈した観客が映画から
飛躍して何かを考える、それがこの映画の楽しみ方なのかもしれな
い。




□ ヒビコレリンク

 特にありません



□ DVD今日の買い!

<今日の作品:誰かを待ちながら>

 『誰かを待ちながら』のTIFFでの上映情報はこちら
  http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=21


<今日のお勧め>

 くせのあるおやじジャン=ピエール・ダルッサン出演作

価格:¥ 3,652(定価:¥ 4,935)
おすすめ度:


価格:¥ 9,450(定価:¥ 5,040)
おすすめ度:


価格:¥ 3,032(定価:¥ 3,990)
おすすめ度:






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2007年10月16日

思い出の西幹道

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クルド人関連でトルコとイラクの緊張が高まっていますね。イラ
ク戦争でクルド人勢力の協力も仰いだアメリカはこの事態にどう
対処するんでしょうか。どうもイラクはベトナム化しているよう
な気がしますが、周辺情勢はベトナム戦争当時のベトナムよりも
複雑です。シリアはイラクからの難民の受け入れを中止している
し、何とかしないと本当に大変なことになってしまいます。
日本としては、海上給油とかISAFへの参加なんていう欧米諸
国のご機嫌取りの方法を論議している場合ではなく、国連なり何
なりを通じて中東諸国と連携して、具体的な問題解決策を探るこ
とのほうが必要なんじゃないかと思いますが…
国会議員の中にひとりでも本当にイラクの人たちのために何をす
るべきかを考えている人がいるのか、まったく疑問に思います。
私はイラク政策が争点になるのなら、日本の国民の多くは、イラ
クの人たちを本当に助けた人や政党に投票すると思いますがね。

さて、
ちょっとリニューアルしたホームページでは“Special Feature”
というコーナーを設けて、特集中の作品を載せていこうと考えて
います。

で、今回は「東京国際映画祭」の特集という予告をしました。
会期は今週の土曜日からですが、一足先に見ることができました
ので、今日から特集スタートということで。
今日から毎号かどうかはわかりませんが、会期中は毎日お届けす
るつもりです。皆さんも六本木、渋谷に足をお運びください。

今日は『思い出の西幹道(仮題)』という作品。来年の中国と日
本の共同制作で、来年の公開がすでに決まっているそうです。
TIFFでは、10/25の10:50と10/27の11:50に上映があります。
ともにティーチンあり。
http://www.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=27




-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 思い出の西幹道

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − 思い出の西幹道


--cinema2072------------

 思い出の西幹道

 西干道
 2007年,中国=日本,101分


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<キャスト&クルー>

監督 リー・チーシアン
脚本 リー・チーシアン
   リー・ウェイ
撮影 ワン・ユー
音楽 チャオ・リー

キャスト チャン・トンファン
     リー・チエ
     シェン・チアニー
     チャオ・ハイイエン
     ヤン・シンピン

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレヴュー>

 1978年、中国北部の町、絵を描くのが好きな小学生のファントウ
と勤めている工場をサボってばかりの兄スーピンの家の向かいに北
京からシュエンという娘が引っ越してくる。舞台で踊りを披露した
シュエンにスーピンは惚れてしまうが、シュエンはまったく相手に
しない。
 中国の田舎の素朴な風景と素朴な人々、これぞ中国映画という感
じの味わい深い佳作。中国第6世代の監督のひとり、リー・チーシ
アンの長編第2作。



<レビュー>

 中国北部の田舎町に住む純朴な兄弟、そこに北京からやってきた
美しい少女、少女は踊りを見せて兄弟を魅了し、兄はいつか町を出
てやろうとあこがれる。ここまでそろえば、いかにもな中国映画の
舞台は完全にそろう。舞台設定も1978年と現在ではないから、その
田舎町には通勤通学の足として蒸気機関車が走り、人々の格好も顔
もすべてが素朴で、ノスタルジーを掻き立てるものだ。
 そんな舞台装置のいかにもな中国映画だから、どうも陳腐なもの
になってしまいがちだけれど、このリー・チーシアンはそれをうま
く食い止めて、“いい”作品に仕上げている。まずいいのは、映像
だ。荒涼とした大地というのは中国北部を舞台にした映画にありが
ちか映像だが、ロングショットでその映像を撮り、画面いっぱいに
使ってそこに人の動きを入れる。たとえば、シュエンが二人の男に
絡まれ、スーピンがそれを助けるシーン、画面を横切る一本道で繰
り広げられるそのシーンは一貫してロングショットで捉えられ、スー
ピンに追い立てられた二人組シュエンとスーピンのところから離れ
る。普通ならここで二人組がフレームアウトするか、カメラがシュ
エンとスーピンによるところだが、この作品ではこのシーンをロン
グで捉え続け、二人組は画面のぎりぎりまで行ったところで戻って
くる。この画面全体をうまく使った映像の作り方によって観客の注
意が画面全体に及び、風景は単なる牧歌的な風景であることをやめ
るのだ。
 また、この町は単なる田舎町ではなく、荒涼とした台地の中に工
場が林立する場所でもある。牧歌的なはずの田舎町に巨大な工場が
いくつも建っている。煙突からは絶えず煙が吐き出され、そのせい
かはわからないが、空はいつも曇り太陽は顔を出さない。この重苦
しく閉鎖的な感じはここにいる若者の未来の暗さをあらわしている。
スーピンは働くのがいやだから工場に行かない“ろくでなし”とい
うことにされているが、その工場で働いていても彼には未来がない
ということがわかってくると、その彼の気持ちも理解できるように
なる。ファントウも意識はしていないが、このままでは自分にも未
来がないということに感づいており、絵を描くということがその暗
さに対する唯一の望みとなっているのだ。
 そんな二人の前に現れたシュエンは北京という都会を具体的にイ
メージできる対象であり、それは未来の象徴でもある。だからスー
ピンはシュエンに固執し、ファントウはシュエンにもらった画用紙
(北京の画用紙)を大事にしまいこむのだ。
 そしてこの作品はさらにその北京=未来を線路の先にある場所と
して意識させ、たびたびその線路を映し出す。線路が消え行く地平
線の先にはまだ見ぬ未来がある。閉鎖的で保守的な田舎町に嫌気が
差した若者は線路の先にある未来を夢見るのだ。

 さらに言えば、牧歌的なまま終わらない終盤の展開も秀逸なもの
がある。どんでん返しというほど驚く展開ではなく、予想の範囲は
出ないのだが、それでもそこには変化がある。それは中国という国
の変化とも結びついているようにも思え、何らかのメッセージを受
け取ることも可能だ。
 この映画はいい映画だ。中国映画が好きな人はもちろん、あまり
中国映画を観たことがないという人にもお勧めできる。ただ、それ
なり数の中国映画を見て、それほど中国映画が好きではないという
人には「またか」という感じの作品になってしまうかもしれない。
しかし、まだ40代と若いこのリー・チーシアン監督は近いうちに中
国を代表する監督になるかもしれないと感じさせるものがあるので、
そんな人も見ておいて損はないと思う。




□ ヒビコレリンク

 『わが家の犬は世界一』
  同じ中国第六世代のルー・シュエチャンの監督作品。


□ DVD今日の買い!

<今日の作品:思い出の西幹道>

 『思い出の西幹道』のTIFFでの上映情報はこちら


<今日のお勧め>

 中国第六世代監督の作品

価格:¥ 3,250(定価:¥ 3,990)
おすすめ度:


価格:¥ 3,636(定価:¥ 4,179)
おすすめ度:


価格:¥ 3,990(定価:¥ 3,990)
おすすめ度:


価格:¥ 4,250(定価:¥ 4,935)
おすすめ度:






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2007年10月15日

麦の穂をゆらす風

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禁煙というのは難しいものですが、今の時代タバコを吸う人は
やはり肩身が狭いものです。私はタバコを吸いませんが、タバ
コの煙はいやだと思う反面、タバコを吸う人はかわいそうだな
と少し思ったりもします。
それに、タバコ代は1日1箱すって1年間で10万円、低所得時
代にはかなりの出費。
と言うわけで、“本気の”禁煙セミナーというののご紹介。
「本気で禁煙をお考えでない方はお断りします!」と言い切っ
て、やめられなければ全額返金という力の入れよう。“本気で”
禁煙を考えている方はぜひどうぞ。



さて、今日から東京国際映画祭のコンペティション部門の試写が
始まりまして、それに行っていたので、レビューが書き終わらず
こんな時間になってしまいました。




-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 麦の穂をゆらす風

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − 麦の穂をゆらす風


--cinema2071------------

 麦の穂をゆらす風

 The Wind That Shakes The Barley
 2006年,イギリス=アイルランド=ドイツ
     =イタリア=スペイン,126分


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<キャスト&クルー>

監督 ケン・ローチ
脚本 ポール・ラヴァーティ
撮影 バリー・アクロイド
音楽 ジョージ・フェントン

キャスト キリアン・マーフィ
     ポードリック・ディレーニー
     リーアン・カニンガム
     オーラ・フィッツジェラルド
     メアリー・オリオーダン

<評価>

☆☆☆1/2(満点=5)


<プレヴュー>

 1920年、アイルランドでは長く支配を続けてきたイギリスからの
独立の気運が高まっていたが、イギリス軍による弾圧はさらに激し
さを増していた。そんな中ロンドンに医者の勉強をしに行こうとし
ていたデミアンも駅でのイギリス軍の振る舞いを見て、ついに義勇
軍に加わることを決意する…
 ケン・ローチがテディとデミアンという兄弟を軸に激動の時代の
アイルランドを描いた社会派ドラマの力作。2006年のカンヌ映画祭
でパルムドールを受賞。



<レビュー>

 アイルランドといえば現在もIRA(アイルランド共和軍)が存
続しており、国家は北と南に分断されている。そこからはイギリス
による迫害の歴史をうかがい知ることはできるけれど、興味を持っ
て知ろうとしなければ、その詳しい歴史を知ることはない。この作
品はアイルランドが「アイルランド自由国」が成立した1921年前後
を描くことで、アイルランド独立戦争の一面をまず紹介した作品と
見ることができる。
 作品はアイルランドの一地方におけるアイルランド共和軍の一部
隊の活動によって語られる。その部隊の指導者はこの物語の主人公
デミアンの兄テディである。彼らは自分たちの土地でのイギリス軍
の横暴(17歳の若者が名前を英語で言わなかったというだけで殴り
殺される)に反発しイギリス政府に対する憎しみを深める。ロンド
ンに渡り医者としての勉強を深めようとしていたデミアンも出発し
ようとした駅でイギリス軍のめちゃくちゃな要求によって運転士や
駅員が乱暴されるのを目にして自分が必要とされていることを痛感
する。
 かくして物語は進む。前半部分ではイギリス軍が悪、アイルラン
ド共和軍が善というわかりやすい構図が基本的はとられ、その中で
戦争の理不尽さや残酷さが描かれるという構造になっている。主人
公は裏切った仲間を殺さなければならないことで葛藤し、戦争が人々
の人生もたらす悲劇を審らかにする。その後の展開も眉間に皺がよ
るようなつらく厳しいものだ。戦争がもたらす悲劇、と書いてしま
うと陳腐だが、この作品が描いているのはまさにそのことだ。時に
はステレオタイプ的過ぎると思われる描写もあるけれど、リアリティ
は失われない。

 この作品で重みを持つのは言葉だ。仲間を殺さざるを得なかった
ときに主人公が言う「自分の中で何かが死んだ」という言葉、ダン
が裁判の結果を無視しようとするテディたちに言う「共和国軍は貧
乏人の敵になってしまった」という言葉。言葉は無力であり、武力
のように短時間で物事を変えることはできないけれど、武力が憎し
みを増長し、人々の感情の部分にしか働きかけないのに対して、言
葉は人々の理性にしみこんでいく。言葉は物事を変えるのに時間が
かかるが、その変化は人間の頭の中に長く残る。武力は簡単に物事
を変えるが、その変化は人々の感覚に一瞬残るだけだ。
 結局デミアンも武器を取ったわけだが、彼は武力で何かを解決し
ようとしていたのではなく、武器を持ち対等な立場に立つことから
始めようとしていただけなのだ。デミアンはアイルランド自由国を
成立させた条約に対する投票結果が「人々の恐怖によって歪められ
た」と言っている。これはつまり、武器を持った勢力と武器を持た
ない勢力の間に対等な関係はありえないということだ。しかし、や
はり彼のやり方は間違っていたのかもしれない。武器を持つことで
もはや話し合いによる解決の道は閉ざされてしまったのかもしれな
い。
 しかしそれでもここからメッセージは浮かび上がってくる。武器
は親しい人を遠ざけると言うことだ。自衛のためであれ何のためで
あれ、(人に向けるための)武器を持つと言うことは親しい人を遠
ざけることになるのだ。その親しい人を守るために武器を手に取っ
たはずなのに、最後には逆の結果を招いてしまうのだ。
 物語の最後にデミアンはもうひとつ印象的な言葉を言っている。
それは「誰のために戦っているのかを覚えておくのは難しい」と言
うような言葉だ。これは、武器を持った戦いは極限的な状況におか
れることでその戦い自体が目的化してしまい、その戦いに足を踏み
入れたそもそもの目的を忘れてしまいがちだと言うことだ。それが
悲劇を生み、戦いを泥沼化していく。そのような現象は、ベトナム
でも、ユーゴスラビアでも、パキスタンでも、アフガニスタンでも、
イラクでも繰り返されてきた。いま世界中で武器を取って戦ってい
る人たちはいったい何のために戦っているのか、戦っている当人た
ちが心からそのことを考えたなら、その戦いの大半は無益なもので
あることが明らかになるはずだ。
 ここに描かれているのは80年以上前のアイルランドという小さな
一地方の物語でしかないが、それは時間と場所を超越したすべての
戦争に当てはまる物語でもあるのだ。




□ ヒビコレリンク

 『男の敵』



□ DVD今日の買い!

<今日の作品:麦の穂をゆらす風>

価格:¥ 3,842(定価:¥ 4,935)
おすすめ度:



<今日のお勧め>

 ケン・ローチ監督作品

価格:¥ 15,619(定価:¥ 18,375)
おすすめ度:


価格:¥ 3,511(定価:¥ 3,990)
おすすめ度:


価格:¥ 3,180(定価:¥ 3,990)
おすすめ度:


価格:¥ 3,990(定価:¥ 3,990)
おすすめ度:




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2007年10月14日

恋愛睡眠のすすめ

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最近、休みがちですね、すみません。

今日は「鉄道の日」、大宮に鉄道博物館がオープンするという
こともあって、ちょっと話題になっていますね。
私は「鉄ちゃん」というほどではないですが、結構電車好きな
ので、鉄道博物館(テッパク)には少し興味があります。が、
混んでるところには行きたくないので、たぶん行かないと思い
ます…
でも、電車で旅行するのは好きだし、旅行するときに時刻表と
にらめっこして計画を立てるのも好きです。実際に旅に行かな
いのに時刻表を毎月買うってことはありませんが、時刻表は好
きなんです。

そんなこんなですが、最近話題なのが“鉄子”ですね。“鉄子”
アイドルとして有名(?)なアイドルの結婚がニュースになっ
たりするくらいですから。最近知ったんですが、そのブームの
もとだか盛り上げ役だかになったのが「鉄子の旅」という漫画
なんだそうですね。
漫画は完結しているようなので、ちょっと読んでみたいですね。
アニメ化もされているようです。
アニメもいいか…

しかし、オタクに続いて鉄ちゃんにもついに市民権がねぇ…



-------- 目次 --------

■ 今日の映画
 恋愛睡眠のすすめ

□ ヒビコレリンク

□ DVD今日の買い!

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■ 今日の映画 − 恋愛睡眠のすすめ


--cinema2070------------

 恋愛睡眠のすすめ

 La Science des Reves
 2005年,フランス,105分


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<キャスト&クルー>

監督 ミシェル・ゴンドリー
脚本 ミシェル・ゴンドリー
撮影 ジャン=ルイ・ボンポワン
音楽 ジャン=ミシェル・ベルナール

キャスト ガエル・ガルシア・ベルナル
     シャルトット・ゲンズブール
     ミュウ=ミュウ
     アラン・シャバ
     エマ・ドゥ・コーヌ

<評価>

☆☆☆(満点=5)


<プレヴュー>

 父が亡くなりメキシコから母の住むフランスへとやってきたステ
ファンは夢の世界に逃避しがちな青年。母に紹介された仕事がクリ
エイターではなく単純作業だと知ってがっくりしていたが、隣にス
テファニーという女性が引っ越してくる…
 『ヒューマンネイチュア』の奇才ミシェル・ゴンドリーが現実と
夢を混同してしまう青年を描いたロマンティック・ファンタジー。



<レビュー>

 この作品を面白いとあまり思えなかったが、結構すごい作品では
あると思う。物語のほうはメキシコからフランスへやってきたフラ
ンス語もろくにしゃべれない青年が、予想外の仕事に落胆し、隣に
引っ越してきた女性との間に誤解が生じ、その誤解を解こうとして
いるうちに恋に落ちてしまうというもの。これ自体はそれほど珍し
い物語ではない。
 ただ、この青年は夢を現実と混同してしまう癖があり、自分の記
憶が現実の記憶なのか夢の記憶なのかがときにわからなくなってし
まったり、夢の中でやったと思ったことを(夢遊病者のように)実
際にやってしまったりしているのだ。そして、この映画がすごいと
思うのは、観客も徐々に現実と夢を行動してしまうように構成され
ているということだ。基本的には夢の世界はダンボールの車やセロ
ファンの水など現実にはありえないものが登場し、現実と区別され
ているのだが、現実の世界でも1秒タイムマシンといったステファ
ンのおかしな発明も出てくるし、終盤になるとステファンが突然に
白昼夢のように夢の世界に入り込むことがあった、現実のなかに一
瞬夢が挿入されたりする。そうなるとひとつのシーンからひとつの
シーンに移ってすぐにはそのシーンが夢なのか現実なのかわからな
くなる。時にはそのシーンが終わっても果たしてそれが夢だったの
か現実だったのかわからなくなり、そのあとの展開を見て始めて判
断がつくということもある。そのように映画を構成するというのは
なかなかすごいと思う。実際に夢と現実がごっちゃになる人という
のはそうはいないと思うが、いやに鮮明な夢を見てそれが本当に怒っ
たことだと信じてしまったり、起きているときに「もしかしてこれ
は夢なんじゃないか」と思ったりすることがある人は結構いるだろ
う。この作品はその感覚をどこまでも敷衍して本当に記憶と現実に
夢が紛れ込むという感覚を表現した作品だ。
 ただ残念なのは、その夢というのがこの青年や“乙女”だけが見
るような夢で、彼とその夢の夢としてのよさを共有できる観客は決
して多くはないだろうということだ。あるいは、この青年の夢への
逃避の仕方がどうも納得できないということもある。かく言う私も、
どうもこの青年の感覚が理解できず、いまひとつ物語りに入り込め
なかった。夢と現実が混乱するという目くるめく体験もその夢(寝
ているときに見る夢)が夢(現実の理想としての夢)としてリアリ
ティを持たなければ、魅力的にはなりえない。
 だから、この作品は質はいいが、見るものを選ぶといわざるを得
ない。果たしてどういう人がこの作品にしっくり来るのかというこ
とは判断しきれないが、少なくともこの青年ステファンの見る少年
ぽいかつ乙女チックな夢の世界を違和感なく受け入れることができ
る人でないと、この作品世界自体に拒否反応を起こしてしまうので
はないかと思う。感じとしては『ドニー・ダーコ』(というSFファ
ンタジー映画があった)に『アメリ』を“加えた”感じ(平均した
感じではなく、増徴されている感じ)。一筋縄ではいかない世界観
だ。

 そのような世界観を受け入れられないとこの映画を楽しむのは苦
しいが、ガエル・ガルシア・ベルナルとシャルトット・ゲンズブー
ルを見るのは楽しい。ガエル・ガルシア・ベルナルはいろいろな映
画に引っ張りだこだが、この作品を観るとその理由もよくわかる。
彼は(メキシコ人という前提があれば)どのような役でもこなせる
のだ。印象としてはサスペンスやアクションでの男くさい役が結構
多いという感じだが、ストレートな恋愛映画もこなすし、この作品
のような情けない男を演じることもできる。ラテン系の濃さをもっ
てこれだけの演技力をもつ若い役者はなかなかいないと思う。おそ
らくこれからもハリウッドでもヨーロッパでも引っ張りだこだろう。
 シャルロット・ゲンズブールのほうはちらほらとは見かけるが、
それほど大活躍という感じではない。おそらくそれは子育て中とい
うこともあるのだろう。しかし、ために見てもこの役者には存在感
がある。年齢を重ねるほどに母親(ジェーン・バーキン)に似て、
地味ながら強い印象を与える存在感を発しているように思える。こ
の作品でも今ひとつつかみ所のない役柄ながらガエル・ガルシア・
ベルナルとうまくバランスをとって映画の世界を支えているように
見える。彼女は2007年9月、脳内出血で緊急手術を受けた(原因は
数ヶ月前の水上スキーでの事故)ということだが、順調に回復して
いるそうで、早い復帰が期待される。





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posted by ヒビコレエイガ at 19:48 | TrackBack(0) | バックナンバー(移行中) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする