2008年06月04日

ぐるりのこと。

今日も梅雨空です。
雨は降らないみたいですけど、どんよりしています。
そんな中、私の頭は沖縄と落語でほとんど占められています。
そんなことを考えながら楽天を見ていたら「まち楽」などと
いうものを見つけました。
これは、地域に注目してその情報を発信しようという試みのよう
です。今のところ北海道と沖縄しかありませんが、八重山諸島の
ところ
を見るといろいろのっています。

私オススメの泡盛宮之鶴も調べられます。
宮之鶴30°1800ml
石垣島ラー油もあります。
石垣島ラー油100ml


今日は今週末公開の『ぐるりのこと。』です。
gururi_img3.jpg
これは、今年のナンバー1ではないかと思います。
今週末公開は東京だけですが、21日からは全国で公開となるよう
なので、お近くでかかりましたら、ぜひご覧ください。
上映情報




■ 今日の映画 − ぐるりのこと。


--cinema2225------------

 ぐるりのこと。

 2008年,日本,140分

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<キャスト&クルー>

監督 橋口亮輔
原作 橋口亮輔
脚本 橋口亮輔
撮影 上野彰吾
音楽 Akeboshi

キャスト 木村多江
     リリー・フランキー
     倍賞美津子
     寺島進
     安藤玉恵
     八嶋智人
     寺田農
     柄本明

<評価>

☆☆☆☆1/2(満点=5)


<プレビュー>

 1993年、小さな出版社に勤める翔子は子供が出来、靴修理屋のカ
ナオと結婚することにする。何事にも几帳面な翔子は週三回の「す
る日」も決め、その日に遅く帰ってくるいい加減なカナオに不満を
述べる。そのカナオは学生時代の先輩から法廷画家の仕事を紹介さ
れ、戸惑いながらも仕事になじんでいくのだが…
 橋口亮輔が『ハッシュ!』以来7年ぶりに監督。自身うつに悩ま
されたという経験を生かして、孤独と人と人とのつながりを描いた
渾身の作品。<レビュー>

 この作品は本当に素晴らしいと思う。映画の始まりは木村多江演
じる翔子とリリー・フランキー演じるカナオを別々に、しかしそれ
が夫婦になる二人であることはわかるように映し出す。ふたりの間
には子供が出来、結婚することに決めている。翔子は小さな出版社
に勤める真面目な会社員、カナオは靴の修理をするいい加減な男だ
が、翔子は「週3回している」と語る。
 ある日、カナオは先輩(美大時代の先輩)に法廷画家の仕事を紹
介される。その話で帰るのが遅くなったカナオに翔子は不満をぶつ
ける。それはその日が「する日」で、その日は10時までに帰るとい
う約束だったからだ。この“約束”を巡る二人の会話が凄い。すご
いというのは激しいけんかになるとか、おかしいとかいうのではな
く、そこにある微妙な心理を見事に描いている点が凄いのだ。ふた
りの会話はかみ合わないのだが、そのかみ合わないことをカナオは
口にし、それがふたりが通じ合っていることを示す。しかし、やは
り最後にはカナオの悪乗りで翔子が怒り、物悲しく終わる。このシー
ンの台詞の一つ一つ、その言葉が発せられる裏にある心理、それが
見事に表れていて凄いのだ。
 このように心理がうまく描写できているのは、カナオという人物
がそもそもリリー・フランキーを想定して書いているのではないか
というくらいにぴったりだからではないか。いい加減で、シャイで、
エロくて、でもやさしくて、人に共感する力がある人物。下品だっ
たり乱暴だったりするようなことを時に口にするけれど、その裏に
は常に相手を思いやる気持ちがある。ただ乱暴な人やただやさしい
人を描くことは比較的簡単だけれど、このように心の底にやさしさ
を抱えた人を描くというのは難しい。それをカナオとそれにほぼ一
致するリリー・フランキーが可能にしているのだ。
 そして、生まれるはずだった娘を失い、翔子が精神のバランスを
崩してうつへと落ち込んでいくところで、彼の優しさと共感する力
が大きな意味を持ってくる。カナオは翔子を支える。励ますとか助
けるのではなく、支える。倒れそうになっている人のつっかえ棒に
そっとなり、その重みをただただ支える。そこから起き上がろうと
するのは倒れそうになっている人の意思によるしかない。その意思
が生まれるまでなるべく気づかれないようにそっと支える。
 彼は的を射たものの見方が出来るのだけれど、それを明かすこと
はあまりしない。たまに「手はきれい」という言葉とか、汚職で捕
まったおっさん三人をコミカルな絵で描いたりして表明することは
あっても基本的には社会や人々に求められていることをする。そん
なあり方が重要なのだろう。
 うつに陥った翔子を見るのはつらい。しかしそこから目をそむけ
るのではなく、そのような状況の核にあるものを見据え、いい方向
に向かうように支える強さ、台風の日に走って家に帰るカナオには
それが見える。でも、うっかり蜘蛛を殺してしまったりもする。
 そういう微妙なつながりが絆であり、それが翔子を支えたのだ。
この作品を見ると、人と人との絆を大事にし、愛する人をもっと大
事にしなきゃという気持ちになる。感動と書いてしまうことは簡単
だが、そんな風に簡単に書いてしまいたくないように心を揺さぶら
れる作品だ。

 その物語は原作者であり監督である橋口亮輔が自身の経験の中か
ら搾り出したものであり、そこからも力作ぶりをうかがうことが出
来るのだけれど、私がこれを渾身の作品だと思ったのは、映画作り
にかけた時間と手間だ。この作品にはすべての季節が登場し、その
すべてでしっかりとロケを行っている。つまり、撮影に1年以上の
期間がかかったことを意味する。そして撮影場所も多岐に渡る。
 さらには、映画にとって重要である天候や光をしっかりと得てい
る。もしかしたらとんでもない幸運に恵まれたのかもしれないが、
おそらくそういうことではなく、求める撮影環境が出来るまで果て
しなく待ったのだろう。大雪や大雨といったわかりやすい天候だけ
でなく、裁判所から見える青空や寺に差し込む柔らかな光などその
シーンに意味を与える微妙な天候をタイミングよく捉えそれをフィ
ルムに定着させる。それを実現させる粘りをみると、これは監督に
とって翔子の天井画のように自分を立ち直らせていく過程でもあっ
たのではないかと思う。監督はたくさんの俳優に少しずつ出てもら
い、支えられ、人とのつながりを確認しながら立ち直っていった。
そんな作品でもあるような気がする。だからこそここまで力がある
のではないか。
 そして、カナオが法廷画家として傍聴するさまざまな裁判、そこ
には90年代の日本で実際に起きた「話題の」事件が次々と登場する。
それらの犯罪を通して私たちは人間と社会との関わり方(とその変
化)を見つめざるを得ない。これは歴史ではなく、あくまでも個人
の経験としての事件であるのだけれど、生きるうえでそれらの事件
を無視することが出来るわけでもない。個人の問題に終始するので
はなく、そのような形で社会とのつながりも描きこむこと、それも
この作品に力があるひとつの理由だ。

 最後に私が一番好きなシーンを。それは泣きじゃくる翔子を慰め
たカナオが翔子にキスしようとして鼻がたれているのを見てやめる
というシーン。翔子の鼻をかんでやったカナオはさらに「ものすご
いいっぱいでた」という。この感動的なシーンに盛り込まれた(下
品な)ユーモア、そしてやさしさ。このシーンにはこの作品のエッ
センスがぎっしりと詰まっている。
 2時間20分は決して長くない。




□ ヒビコレリンク

 『ハッシュ!』

 『ぐるりのこと。』公式サイト

posted by ヒビコレエイガ at 15:00| Comment(3) | TrackBack(0) | 日本2000年以降 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いやはや、久しぶりです。

今はかなり映画のボランティアエキストラをやっていますが、のめり込むキッカケになった現場がこの橋口監督の『ぐるりのこと。』に関わったお陰です。もちろんエキストラ参加シーンのみの関わりです。
映画の仕上がりでも分かる通り、多くの役者さんが1カットの出演を端口監督故に待ち望んだと聞いてます。その細やかさは現場のエキストラに対しても同じでした。
えてして、プロダクションのエキストラをプロのエキストラと勘違いされる方が多い中、人を見抜く目を持たれた橋口監督は、押さえとしてプロダクションのエキストラを呼ばれても、現場でボランティアエキストラの方に卓越した人が居ればその人を重視してフレームの中に収めるなんぞ当たり前の事でした。

幸運に試写会で観て、本当に短く感じた140分間、自分が同化した映画でした。
Posted by アーロン at 2008年06月05日 06:45
> アーロンさん!
いやあ、本当にお久しぶりで。お元気ですか?
この作品に映ってらっしゃったのですか?傍聴人か何かで?
しかし、ボランティアエキストラってのは興味深いですねぇ…
アーロンさんの自分Walker発見してしまいました。
Posted by 日々是映画 at 2008年06月09日 13:42
あ痛たたたた・・・(苦笑)

自分Walker 見つかってしまいましたか!
ほぼ日さん(懐かしい呼び方かな?)のようにコメントを書く事は出来ないので、自分が関わった映画だけはと思い、無理せず書いています。
苦心してます。(苦笑)
けなす事は誰にだって出来る事なので、故淀川さんの日曜洋画劇場の解説ように?極力良い点を見つけて書く事にしています。
Posted by アーロン at 2008年06月11日 10:21
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